Tt1:08

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2025/04/30(水)

序:暮らしと染色

7.自然染色の歩み (一)

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・本草と浸染

自然染色はその進展の過程として、まずは摺染から始まり、そして次には浸染になりました。初めはいろいろと緑色の摺染を試すなかで、黄はだや梔子 (くちなし) を、煮出した時に出来る黄色い液が、とても美しいので、それを摺染にしたり、またさらにその液の中に裂 (きれ) を入れると、そのままで黄染が出来てくるので、そのようにして自然に浸染をするようになりました。

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それではなぜ、黄はだや梔子 (くちなし) を、煮出すようになったのでしょうか。それは、野生の鳥や獣を見ても分かるように、病気を治したり、あるいは、傷を癒したりするのに、薬草を食べたり、または、傷口に塗るといったことをしていたからです。

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人間も野人に近い生活をしていた頃から、植物が人の体を整えることを、いつからともなく、本能的に知っていました。ところが人は、火を知り、それを使うようになると、お腹 (なか) の薬として、黄はだの皮を用いるにしても、それをそのまま食べるのには、どうしても食べにくいことから、それをいったん、水に入れて、火で煮出して、その煎じ汁を飲むようになりました。そして、それと関連して、染料液が作られ始めます。

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もともと人間が、病気を治そうと思って使ってみた木や草は、数限りなくあったであろうけれども、そのなかでも特に目立つ色を持ったものは、いち早く利用されたことでしょう。ところがこれを化学的に考えてみると、そういうものが含んでいる色の成分は、一方では、生薬 ( しょうやく:合成薬品ではなく、天然の薬物 ) として重要であるとともに、また一方では、天然染料としても、代表的なものなのです。

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参照:「日本染織辞典」上村六郎

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